好きになっても、いいですか?
「なぜ、俺や早乙女じゃなく、君に――?」
「ええ。少し……言いづらいのかも知れませんね。その……早乙女様と……」
「早乙女と?なんだ?」
「男女の仲、のようですので……。近々正式に発表されるのかも」
頭を鈍器で殴られたような衝撃を純一は受けた。
信じられない。信じたくない。
もしもそれが事実だとすれば、また女性にも、そして絶大の信頼を置いている敦志にまでも事後報告という形で裏切られたことになる。
しかし、敦志には直接“麻子を貰っていいか”と言われたことも事実。
「彼女……芹沢さん。懇親会の時から、早乙女様といい雰囲気でしたから」
「――いい。とりあえずそれを寄越せ。5分過ぎた」
「――――失礼いたしました」
パタン、と扉が閉まるや否や、純一は自分の手の中にある辞表を今一度見つめた。
少し目を閉じて何かを考えた後に、二人のいる隣室へと近づく。