好きになっても、いいですか?


まだ、麗華が社長室に足を踏み入れる前――。


隣室第一秘書室では、麻子も敦志も自分のデスクに向かって黙々とパソコン作業を進めていた。


そんな真剣な麻子を、敦志は気にしながら目の前の仕事に向き合っていた。


目の前で起きた事故で母を亡くした心理的外傷。
しかも当時麻子は幼く、その傷は計り知れない。


敦志は麗華からの話を悶々としながら、何度も何度も頭で考えていた。


カタッ、と麻子の手が止まった時に、敦志はハッとして麻子の方を見た。


「早乙女さん」
「は、はい」
「私、やっぱりここには……」



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