好きになっても、いいですか?
急に麻子が深刻そうに切り出した。
敦志は不意なこと過ぎて、慌てて麻子に近づいて聞く。
「何を急に??」
「……元々、華やかな場にも行かなければならない社長秘書なんて、私には向いていないんです」
「そんなことありませんよ。芹沢さんは能力的にも印象的にも十分な……いえ、それ以上のレベルです」
「――いえ。絶対にいつか、迷惑を掛けますから」
そういう麻子は、まるで何か既にそういうことがあったかのように話す。
それを感じて敦志はつい言ってしまう。
「河川敷での懇親会のことや、この前の訪問先でのことですか……?」
それを口にしてしまったあと、敦志はハッとして口に手を当てたがもう遅い。
「……!早乙女さんも、ご存じなんですね……」
少し憂いめいた表情をして、麻子はそう呟いた。