好きになっても、いいですか?
ガチャッ、と、そのドアノブの回る音で一瞬時間が止まる。
自分に回されている敦志の手は、少し緩むだけで解放されるまでではなかった。
その態勢のまま、ドア付近にいるであろう人物に視線を移した――。
「なにを……してる」
低く、静かではあるがどこか怒りが感じられるその声の主は……。
「――――純一くん」
ふっ、とこの時、麻子の体から敦志は離れた。
いくら離れようと思った相手とはいえ、見られたくない場面に遭遇されてしまった麻子は、顔にこそ出さないが動揺をした。
そして、何も言えずにただ純一の熱くも冷たくも感じる視線に捕われたままだった。