好きになっても、いいですか?
プルルルッ、と、今度は秘書室の電話が鳴り響いた。
その電話の2コール目で、素早く受話器を取ったのは敦志だ。
電話応対している間にも、純一の何か言いたげな視線は麻子に向けられたまま。
けれど、それだけで、他に何か言われるでもなく、ただ本当に視線に犯されているだけ。
「社長。明日の午後に、安田コーポの内野様がアポイントを取りたいと」
「空いているなら構わない。敦志に任せる」
「承知しました」
そんな中、敦志の業務的な会話に応えた純一は、麻子を見ることなく社長室へと戻って行った。
受話器を置いた敦志は再び麻子を見て、ニコリと意味ありげに微笑むと、自分のデスクについて仕事に戻った。