好きになっても、いいですか?


――――翌朝。

麻子は、辞職したはずの会社に間に合う時間に起きて、外出の支度をしていた。
着ている服は、いつもとは違ってかっちりとしたリクルートスーツ。
ハローワークに向かって、どこかいい求人があればその足で面接にいこうとの考えてのことだった。


(うじうじするのはとっくの昔に卒業した!)


鏡に向かって、もう一人の自分にそう激励の言葉を胸の中で呟くと、頬を軽く叩いて口角を上げる。
『よし』と小さく口にして椅子を立った。

そして小さな仏壇に手を合わせ、玄関に向かった。


ガチャリとドアを開けて、踏み出そうとした矢先に正面から声を掛けられる。


「おはようございます、芹沢さん」
「ひゃぁっ?!」



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