好きになっても、いいですか?
この手術を受けられたのは、純一のおかげ。
そして、自分はその借りを返すために貢献しなければならない。
麻子はそう思っているから、仕事を選んだ。
まして、近々退職する決心なのだから、少しでも――。
そういう気持ちで。
「今日と明日くらい、せめて定時で帰宅しろ」
「しかし――」
「命令だ。残件が出るようだったら、敦志に」
「……わかりました。ありがとうございます」
麻子はやけによそよそしい口調で深々と頭を下げると、スケジュール確認の用紙を手渡して颯爽と秘書室へ戻ってしまう。
「……」
社長室に麻子の姿がなくなると、純一は再びパソコンに向かって仕事に戻った。