好きになっても、いいですか?
そうして時計の長針が真上を指した時には、すでに社長室は灯りが消されていた。
外観から見ると、一見オフィス内には誰もいないように見える。
しかし、暗い中の廊下に、僅かだが足音が聞こえる。
非常灯の灯りといつもの感覚で、ある扉の前に立っていたのは純一だった。
そこは同フロアにある“応接室”。
純一はドアをゆっくりと開けた。
廊下と同じく、応接室も灯りは消されていて、窓から差し込む月明かりが暗がりの中に薄らと影を作っていた。
パタン、と静かに扉を閉めた後、純一は辺りの気配を探りながら声を出した。
「――――芹沢……?」