好きになっても、いいですか?

玄関を開けて目の前に立っていたのは、あの社長の専属秘書、早乙女敦志だ。
敦志は綺麗なお辞儀をして、麻子に挨拶をする。その姿勢を正すと、にっこりと笑顔を浮かべた。


「な、なんですか……」
「突然、お迎えにあがって申し訳ありません」

(お迎え?なに言ってんの?)


怪訝そうな顔をしたまま距離を保ち、玄関のドアを閉めると、麻子は敦志に背を向けて鍵を掛けた。
そして軽く頭を下げて、敦志の前を横切ろうとした時だった。


「社長がお待ちでいらっしゃいます」
「は?!」
「御同行、お願い出来ますでしょうか」
「ちょ、なんですか?制服ならクリーニングに出してますけど!」


優しい笑顔と口調とは裏腹に、半ば強引な形で麻子は車まで連れてこられた。


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