好きになっても、いいですか?
立てると意思表示したものの、自分でも予想外だった。
腰が抜けたのか……足が今になって竦んでいるのか。
それでも麻子は懸命に立とうと自分の体に命を下すが、全く足が言うことを聞かずにいた。
そんな麻子の様子を見て、純一はふわりと麻子を抱き上げた。
「!!!」
麻子は驚きすぎて声も出せなかった。
決して小柄とは言えない自分の体を、いとも容易く抱きあげる純一に、普通であれば素直に心をときめかせる場面である。
「あ……の、ベンチに……」
なんとかか細い声でこのまま移動するのは避けたいと、ベンチに腰を掛けることをお願いした。
純一はただ黙って麻子の顔を見つめると、麻子の言うとおりにベンチにゆっくりと麻子の体を預けた。