好きになっても、いいですか?
心の中で、深呼吸を繰り返す。
純一が麻子の隣に座ると、麻子の手がまたいつかの時のように震えてるのに気が付いた。
今はあの“トラウマ”が原因ではない。
けれど、下手をすれば、さらに麻子に新たなトラウマが出来てしまうところだった、と、純一は一連の犯人達に怒りが込み上げる。
そしてその怒りよりも、目の前の大切な人が震えていることに、どうにかしてやりたいという気持ちが上回る。
そっと、試すように自分の手を麻子の手に重ねた。
「大丈夫だ」
触れられた瞬間に、びくっと反応をした麻子だが、純一の声と体温は不思議と心を落ち着かせる作用が働くらしい。
純一は麻子に拒否をされないことを確認した後に、堪え切れず、そのまま手を引き自分の胸の中に麻子をおさめた。