好きになっても、いいですか?
(また、この感覚)
男性なのに、どこか甘く落ち着く匂い。
温かな胸から聞こえる鼓動は、まるで自分のものと同調しているようで、恥ずかしくも落ち着くリズム。
自分が誰かに寄りかかるなんて想像したこともなかった。
(こんなにも、心地いいなんて――)
ほんの数秒、自分の体を純一に預けていた。
しかし、すぐに我に返った麻子は動くようになった自分の手に、“突き放せ”と命令する。
「――やめてください」
その一言は、どんなに頑張っても純一の目を真っ直ぐ見ることが出来ないままの一言。
そんな麻子の腕を純一は離さなかった。