好きになっても、いいですか?

社長室の前で、敦志がなにやらナンバーを入力すると解錠された音がする。
その後ノックをして、敦志はドアを開けた。


「社長、お連れいたしました」
「ああ」


まさか自分がこの会社に、しかもまた社長室なんて大それた場所に足を踏み入れるなんて思っていなかった麻子は、入室を躊躇していた。


「芹沢さん、どうぞ中へ」


物腰の柔らかい敦志にそう言われてしまうと、なんとなく従わざるを得ない。だからここまでついてきてしまったというのもある。

足音のしないカーペット。
そこをゆっくりと歩き進めて、デスクに向かっている純一と再び向き合った。


「ご用件はなんでしょう」

(なんだかデジャヴだ――)


昨日もまさに、こんな雰囲気で麻子はそう純一に言い放った。



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