好きになっても、いいですか?


すっかり約束の時間を超えて面会していたが、看護師さんには優しく見送られた。

明日の大きな手術を控えているということで大目に見てくれたのだろうか。

そんなことを考えながら麻子は病院を出た。


見上げるとぼんやりと光る月明かり。
自分には太陽のような明るい光より、こういった月明かりの方が性に合うな、なんてことを考えて、顔を上にあげたままゆっくりと歩き進めた。


病院の正門を出た時に、人の気配を感じてその顔を下げた。


「――――なっ……?!」


その正門に背を付けて立っていた人物に驚いて、麻子は油断していたのもあって少しバランスを崩してよろけてしまった。


「ったく」


そういいながらも、優しい手で麻子を支えるのは純一だった。


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