好きになっても、いいですか?
そっと、その触れていた手を引き、見納めるように純一の顔を切なげな笑顔で見つめた。
そして音を立てないように、そっと寝返りを打ってベッドから降りようとした。
「!!」
すると、背を向けた時に純一の手が自分の体を包んで捕まってしまう。
(起きちゃった――?!)
ドクドクと心臓を鳴らしながら、麻子はそのまま、じっと動かずにいた。
しかしいくら待っても何も聞こえず、動かないので、そーっと頭を回してみる。
スー、という寝息と純一の寝顔が見えて麻子はホッとする。半面、寝ながらにしても捕まえられたということに嬉しさを感じる自分が確かにいた。
今度はゆっくりベッドから降りることに成功すると、純一の体にそっと布団を掛けてあげる。
麻子が身支度をして暗い寝室から出ようとした時に、カサッと何か足に当たる音がして視線を落とした。