好きになっても、いいですか?
「しゃ、社長?!お、おはようございます!」
受付嬢も驚くほど、純一はエントランスに足を踏み入れるのは久方ぶりだった。
通勤してくる社員も、初めこそすぐに社長だとはわからずにいたが、ざわつき始めて皆が気付き始める。
すると少し距離をとって、皆、丁寧に挨拶を交わして行く。
(やはりもういないか)
「社長、心当たりは?」
「そんなものない!」
取り乱す純一の姿に、社員も驚きながら遠巻きで様子を窺っている。
敦志は純一と比べ、冷静なままだが、かといって今の純一をコントロールできる術もなかった。
そのとき誰もが距離を保っていた純一に、つかつかと歩み寄る一人の人物がいた。
その人物は純一の目の前まで歩み寄ると、物怖じすることなく言った。
「おはようございます」