好きになっても、いいですか?

線の細い体を綺麗に傾けてそう挨拶したのは……。


「……雪乃ちゃん」
「純一さん。珍しいところでお会い致しましたね」


にっこりと笑い掛けるその雰囲気が、つい今までの一刻を争う事態を忘れさせるよう。
そのおかげと言えばいいのか、純一は熱くなっていた気持ちが落ち着いて、冷静さを少し取り戻す。


「今日は純一さんにお渡ししたいものがあって……」
「とりあえず戻る。雪乃ちゃんも一緒に」
「はい」


踵を返して純一は敦志に指示すると、それに続くように敦志と雪乃が歩いて行ってしまった。


ざわめくエントランスホールをそのままに、3人は再び15階へと戻った。




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