好きになっても、いいですか?

「何……」
「お取り込み中、申し訳ありません」


純一が何かを言い返そうとした時に、雪乃が間に割って入ってきた。


「“辞めてしまった”というのは、もしかして麻子ちゃんのことかしら?」
「――まだ正式にそうなったわけでは」


敦志が純一の代わりに答えると、雪乃は手にしていた袋をそっと横のテーブルに置いて純一に一歩近づいた。

そしてゆっくりと見上げて、真剣なまなざしを向けて言った。


「私も手伝います。捜しましょう」
「いや、君は――」
「私、純一さんだけじゃなくて麻子ちゃんにも用事があってきましたの。それが理由にはなりません?」


一歩も引かない姿勢に純一は降参して、ひとつ息を吐いてから自分のデスクへとついた。


「ご自宅に行ってみてはいかがですか?」
「いや、恐らく不在……」
「!!」


今、掛けたばかりの椅子から飛び上がるように純一が立ちあがった。


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