好きになっても、いいですか?
(そうだ!こんなことを忘れるなんて!)
「病院だ!」
そう言って飛び出そうとした純一を、敦志が体で行く手を阻んで制止した。
そしてゆっくりと首を横に振って言う。
「……純一くん。芹沢さんの手術は今朝から始まってる。一般的にバイパス手術は5時間前後かかると言われてるから――」
その時間までは、麻子も精神状態を張り詰めているはず。
だから、もし病院にいたとしても、その頃までは迂闊に刺激しない方がいい、と敦志は訴えた。
「――――よこせ」
「は?」
「あと約4時間。それで今日の仕事を片づける」
そうして純一はこの上ない程の集中力で職務をこなし始める。
部屋の隅にあるソファで、雪乃は純一を見つめながら時間が経つのをただ座って待っていた。