好きになっても、いいですか?
「――以前に、こういう事件があったのは事実です。合成写真ではありません」
敦志は心苦しそうに話し始めた。
目の前にあるのは、中川に迫られた時の麻子の写真。
敦志のおかげで大事には至らなかったが、まさかこんな物証までも残されていたとは誰も――敦志でさえ、思っていなかった。
「――――……」
無言で純一は身を翻すと、社長室ではなく、廊下へと出るドアを思い切り開け放った。
その音に反応して、隣で待っていた雪乃も恐る恐る廊下へ身を出した。
「しゃ、社長!」
「純一さん……?」
敦志が冷静になるよう呼びかけても、頭に血が上っている純一には全く効かない。
そんな2人を追うようにして、雪乃も後に続いた。