好きになっても、いいですか?
「純一さん、そろそろ行ってみましょう」
「え?」
「その為に時間を作ったんではないのですか?このようなことをする為ではなく」
雪乃は大人びた顔でそういうと、背を向けてドアノブに手を掛けた。
「……そうですね」
ようやく敦志も本来の冷静さを取り戻して、眼鏡を押し上げながら雪乃に続いてそう言った。
純一は二人の言葉に唇を少し噛んだ後、目の前にある中川の顔に近づいた。
「――――これは執行猶予じゃない。せいぜい残りの数時間、のんびりしておけ」
そう吐き捨てて純一は立ちあがると、雪乃の待つ扉へと消えて行った。
「……はぁ。美月に付き合って高くついたな……」