好きになっても、いいですか?


「城崎様のおかげで、傷害事件にならずに済みました」
「いえ。きっと、純一さんも寸でのところで気が付いたはずですから」


冗談混じりに御礼を言う敦志に、にっこりと笑ってそう答える雪乃に純一は目もくれなかった。


今はただ、麻子の元へ。


そのはやる気持ちだけが全てを支配していて、いつもと同じ車のスピードさえも、遅く感じてイライラしてしまう。


「麻子ちゃん、居てくれるといいんですけど」


小さく雪乃がそういうと、初めて純一が窓の外から雪乃へと視線を移した。


(雪乃ちゃんは、一体いつからそんなにアイツを慕うようになったんだ……?)


そんな疑問を感じていた時に、やっと病院に到着する。
純一はすぐにそんな疑問も消え去って、一番に降車した。



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