好きになっても、いいですか?

バタバタと、病院に似つかわしくない慌ただしい革靴の音が鳴り響く。
あっという間に純一は、麻子の父・克己の入っている病室へと辿り着いた。


「すみません、院内ではお静かに」


後ろから歩いてきた看護師にそう言われると、純一は謝罪よりも先に質問を投げかける。


「ここに居る、芹沢克己さんの手術は?その家族は――」
「お知り合いの方ですか?」
「私どもは、ご家族である芹沢麻子さんの勤務先のものです」


焦る純一に看護師が疑いの眼差しを向けられたところを、敦志が名刺をすっと出してフォローを入れる。
敦志の対応を受けると、看護師の顔も少し緩んで教えてくれた。


「患者さまは、先程無事に手術は終わったと聞いてます。ご家族の……娘さんは、おそらくICUに付き添われているかと」
「ありがとうございます」


そのお礼の言葉も、発したのは敦志で純一は言葉よりも先に、体が動いていた。


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