好きになっても、いいですか?

「――――え?」


“純一”という言葉に勝手に反応してしまうあたり、自分にはまだ彼の存在がしっかりと残っているのだ、と麻子は認識させられた。


「麻子ちゃん……何か大変なことがあったみたいね」
「……」
「あ!私は特に詳しく知ってる訳じゃないの。ただ……」

(“ただ”……?)


その後、雪乃は間を置いて暫く黙っていた。
そして顔を上げて麻子に伝えた。


「今日、中川という部下に殴りかかったり……病院へも、いち早く足を踏み入れてあなたを捜していました」


中川というフレーズにも敏感に反応してしまったが、そこは声に出すまい、と麻子はまだ黙って雪乃の話に耳を傾けた。


「私はそんなに純一さんとは知り合って間もない方ですけど……それでも、あんなふうに感情的になる姿は初めてで――」

< 397 / 445 >

この作品をシェア

pagetop