好きになっても、いいですか?


「え?いなくなった?!」


病院の中庭で、雪乃との電話を切った純一から聞いた敦志は声を上げた。


「追えば逃げる、捕まえれば消える……」


独り言のように純一が呟く姿を敦志は見て、ずっと言いたかったことを口にした。


「――純一くん。今だけ兄として……いや、男として言わせて欲しい。
純一くんは、一体どうしようとしてる?」
「――――は?」
「城崎雪乃と芹沢麻子、どちらを――――って意味だよ」
「どちらって……何を言っているんだ?」


それは、とぼけたフリでも何でもない。
本当に敦志が何を言っているのかわからなくて、純一は呆気にとられた顔で敦志を見ていた。

そんな純一にすら苛立ちを感じるほどに、珍しく敦志は熱くなっていた。


「何を……って!純一くんには城崎さんという婚約者がいるんだろう?!」
「婚約者――――」

(待て……そういえばアイツも……)



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