好きになっても、いいですか?

「俺には弟がいる。まぁ……特に仲がいいわけでも悪いわけでもないが。ちゃんと血の繋がった弟が。
弟も、藤堂コーポレーションの傘下にある企業の重役だ。確かに、見合いと言われて初めに持ちあがったのは俺の名だが……当然、俺は父に断った」


すらすらと説明される内容を、麻子の脳にはインプットされるが、心が追いついて行かない。
しかし純一は、文面等を頭で理解することを得意とする麻子を知っているからか、次々と話を続ける。


「目的は藤堂と城崎の提携。なら、別に俺じゃなくても同じこと。加えて、あの2人はどうやら相思相愛らしい」

「え……でも、だったらどうして城崎様は、社長のところに毎回……」
「――彼女に会ったことのある君なら分かるだろ。雪乃ちゃんは古風……というのか、今時珍しいほど純で奥手だ。だから、なんでも兄である俺に伺いをたててからじゃないと不安らしい」
「それじゃ――」

(あのお弁当も……)


麻子が今までの雪乃の言動を思い出しながら、ひとつずつその事実に当てはめる。
すると、純一が溜め息をついて言った。


「……聞かれても困ることばかりだ、と、再三言っていたんだけどな。俺は敦志とばかりいたから、弟についてわからないことの方が多いから」




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