好きになっても、いいですか?
「――認めろ、麻子」
全く麻子にペースを握らせることなく、純一は不意に口を離してそう言った。
「俺が必要だ、と」
「――――っ……ま」
「……なに?」
優位に立ったかのように、純一が麻子に詰め寄ると、麻子は小さく呼吸を整えながら何かを口にした。
それを純一は腕を緩めて距離を取り、聞き返す。
麻子は純一の胸に手を添えたまま、上目遣いで純一を見て眉間に皺をよせながら再度言う。
「本当、俺様……ですよね」
その渋い顔に純一は一瞬ドキリとするが、暗い中よく麻子の顔を見てみると、涙目に頬を赤くしているのがわかった。
その表情は、麻子なりの照れとそれを隠すためのものだと知ると、どうしようもなく愛しく思う。
「ひゃっ……」
「そう。俺様だ。だから、俺を裏切るなよ」
純一が麻子の腰を引き寄せ、笑って言った。
しかし、“裏切るな”と言った時の、少し不安げな純一の気持ちを麻子は悟る。