好きになっても、いいですか?


「秘書は、どんな時でも忠誠を誓うものだと思ってますから」


その時、初めて麻子は純一に素直に微笑んだ。


「――秘書としてだけか?」
「……あなたがそれでいいのなら」
「俺にはお前しかいない」


(可愛げもなくて、素直じゃなくて、甘えられなくて、


こんな私でいいのなら―――)


「あなたが必要である限り、傍に――――」



首に手を回して背伸びする。
そんなことをしたのは生まれて初めてだった。


足元にはシャラッと一筋のチェーンが弧を描き、赤い石が下から二人を見上げていた。

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