好きになっても、いいですか?



「……あ。私、そろそろ戻らないと……」


暫く抱き合った後に、そっと離れて麻子はぽつりと言った。
名残惜しそうに腕を完全に離せずにいるのは自分と同じだ、と純一はそんな小さなことですら喜びを感じる。


「あれ……?」


麻子が急に何かを探すように、きょろきょろとし始めた。


「どうした」
「いえ……あ、あった!」


それは二人の足もとに落ちていた。
麻子は大事そうに手のひらに乗せると、それをじっと見つめて漏らす。


「――チェーン取り替えてもらったばかりのはずなのに……」


悲しそうな、淋しそうな……何とも言えない表情の麻子を見て、純一がそっと、その手のひらに手を重ねた。


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