好きになっても、いいですか?
「もういいってことだろう」
麻子は純一の顔を見上げた。
麻子の目には純一もまた、少しもの悲しげに見えるような気がした。
「もう、母親がいいって言ってるんだ」
「…………お母さん」
麻子はそう呟くと、また視界が滲んで何も見えなくなった。
純一が、そっとネックレスを乗せた手を握らせると、麻子の頭を一度撫でてまた引き寄せる。
「お父さん。本当、良かったな……」
「はい……」
外はすっかり夜も更けていて肌寒かったはずなのに、麻子はいつまでも体に熱を持ったままだった。