好きになっても、いいですか?
「失礼いたします」
「おはようございます」
敦志と麻子が同時に社長室へと入ると、純一に言葉を掛けた。
純一のパソコンの画面は先程から変わらずに同じものを表示していた。
そこに麻子の声が聞こえて弾けたように席を立った。
そんな行動を見て麻子が目を丸くして、敦志は苦笑した。
「お……遅い」
そして当の純一は、その自分の行動が明らかに麻子を待っていたと思われる、と平静を装った。そして、再び椅子に腰を掛けると歯切れ悪くそう言った。
「自分で“何時でもいい”と仰ったのでは?」
「…………」
敦志の鋭い突っ込みに、純一は頬杖をつくフリをして口元を隠した。
「ああ。こんなゆっくりしてられませんよ、芹沢さん」
「え?朝からお客様がいらしたり……?」
「いえ――――」
「秘書はお前達だけだからな」
敦志が仕事モードで麻子に話しかけると、純一がそれに便乗して仕事モードをオンにして話に割って入る。