好きになっても、いいですか?
「……は?」
麻子はすっかり忘れていたのだ。
昨日までの一連の出来事を。
「まぁ、敦志とお前だったらなんとかこなせるだろ」
「また、そうやって……。オレ達も同じ人間だよ?」
砕けた口調で敦志が言い返すのを、隣でまだ麻子はピンと来ずに立って見ていた。
そんな麻子の様子を見て、純一がいつものように椅子に背を預けて肘かけに頬杖の状態で口を開いた。
「まず、中川。アイツはもうここにはいない」
中川という名を聞いて、麻子は一気に全てを思い出してハッとする。
純一の苛立った表情、口調から、おそらく“あのこと”を知っているのだ、と麻子は悟った。
「いない……というのは」
(クビ……?)
純一ならばやりかねないと、麻子が思った時に敦志が口添えした。