好きになっても、いいですか?
02
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「あの辞表は、私が作成したものです。本当に……申し訳ありませんでした」
早朝に社長室にきたのは麗華だった。
「……なぜ、そんなことをした」
「……」
「君は優秀だと聞いていただけに残念だ」
「うっ……」
純一は頬杖をついたまま、審判を下すような目で麗華を真っ直ぐに見据える。
その視線に耐えられなくなった麗華は、口を手で抑えて涙をこぼした。
「も、申し訳……ありません……」
「まだ、何か?」
「あ、相川さんの……中川常務の件も……」
「まさか、お前の差し金か!!?」
頬杖をついていた手が、ドンっと大きな音を立ててデスクに落ちると、麗華の肩はびくっと跳ねあがって息も止まった。
「い、いえ……違います、本当です。それだけは信じて下さい!」
「じゃあ、どういうことだ」
「ただ……事後報告を受けて……知っていた、のに……」
「……もういい」
そうして純一がくるりと椅子を回して背を向けると、麗華は体を倒したまま、ずっと自分の足元を滲む視界で見ているだけだった。
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