好きになっても、いいですか?

02


***


「あの辞表は、私が作成したものです。本当に……申し訳ありませんでした」


早朝に社長室にきたのは麗華だった。


「……なぜ、そんなことをした」
「……」
「君は優秀だと聞いていただけに残念だ」
「うっ……」


純一は頬杖をついたまま、審判を下すような目で麗華を真っ直ぐに見据える。
その視線に耐えられなくなった麗華は、口を手で抑えて涙をこぼした。


「も、申し訳……ありません……」
「まだ、何か?」
「あ、相川さんの……中川常務の件も……」
「まさか、お前の差し金か!!?」


頬杖をついていた手が、ドンっと大きな音を立ててデスクに落ちると、麗華の肩はびくっと跳ねあがって息も止まった。


「い、いえ……違います、本当です。それだけは信じて下さい!」
「じゃあ、どういうことだ」
「ただ……事後報告を受けて……知っていた、のに……」
「……もういい」


そうして純一がくるりと椅子を回して背を向けると、麗華は体を倒したまま、ずっと自分の足元を滲む視界で見ているだけだった。



***



< 422 / 445 >

この作品をシェア

pagetop