好きになっても、いいですか?
「――いえ……」
「?」
麻子には、美月が今どこで何しているのかは到底見当もつかない。
しかし、麻子は美月についてある予感――というか、色々と考えてしまうことがあった。
それは自分の身には関係のないただの予測に過ぎないのだが……。
そんな思考を一度停止させて、麻子が再び麗華に焦点を合わせた。
「私、仕事に戻りますから」
「……引き出しにあるファイルとPCフォルダを見るといいわ。あなたなら、すぐに私の代わりができるでしょう?」
そう言って麗華はくるりと背を向けて去って行った。
暫く麻子は麗華の背中を見ていたが、そのまま振り向くことなく歩いていく麗華を途中で視界から外してオフィスに戻った。
そんな麻子とすれ違うように、麗華は立ち止って振り返る。
「――ごめんなさい。負けた相手があなたなら、諦めもつきそうよ」