好きになっても、いいですか?
03
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「まだ戻らないところを見ると、彼女、捕まえましたね」
「……俺にはまったく理解できないけどな」
麻子が麗華を追ったとわかっている純一と敦志は、手を動かしながら会話をしていた。
「それにしても……強姦未遂、本当に警察に知らせなくてよかったの?」
敦志がそういうと、純一はピタッと手を止めて視線はそのままに答えた。
「本来なら、警察どころか地獄に落としてやりたいけどな……。警察沙汰にすれば、アイツも色々、苦痛なことがあるだろ」
「一社長が、自社のことよりも一人の女性を気にするなんて、ね」
「もともと、この椅子に執着はない」
全て麻子を中心に世界が回る。
そんな純一は、ついこの間までの男とはまるで別人だ、と敦志は思った。
が、元々はこういう人間だったのだ、とすぐに気付くと小さく笑った。
「“口外したら社会から排除する――いや、この世から抹消する”と、男達を脅したのは本気だね」
「……」
「さすがにその約束は守るだろうね。でも」
純一はただ黙って視線を落したまま。
敦志が一人話を続ける。