好きになっても、いいですか?
「早乙女さんの補佐……ですか?」
「そんな!だって宇野さんが……」
平静を装った麗華が、敦志に問いかける。
隣の美月は何かを言い掛けたが、麗華の様子を窺って口を噤んだ。
「はい。とりあえずはそのように。では仕事に戻って結構ですよ。芹沢さんは私と一緒に」
敦志はにこやかにそういうと、2人に背を向けドアに向かった。
麻子も敦志を追おうと、2人にお辞儀をして顔を上げるが、その時の2人の鋭い視線に一瞬ドキリとしてしまう。
ドアノブに手を掛けて待っている敦志の元に急ぎ足で向かい、部屋を出るときにもう一度2人を見た。しかし、そのときには既にデスクに向かっていて、鋭い視線などなかったように仕事についていた。
麻子と敦志が退出したあとにぽつりと聞こえる。
「·……どうして、あんな何もない女が」
しかし、もちろんその声は麻子には届いてやしない。