好きになっても、いいですか?
「え?常務に?」
「そう!だから私、できるだけお昼とかお届けしたいと思っているから――だから、麻子ちゃんにも会えるな、って」
麻子はそう説明した敦志を見て目を丸くした。
雪乃はぶんぶんとその麻子の手を上下に振って、嬉しそうに言った。
「――でも」
麻子が言い掛けて口を噤んだ。
考えたら、うちの社には“副社長”という椅子もあったはず。
だとしたら、その席に純一の弟を呼ぶのが普通だと思ったのだが――。
なにか理由があるのかもしれない。
まして、婚約者の雪乃の居る前で“どうして副社長じゃないのか”など言えるわけもない、と、麻子は気付いて押し黙った。
「なんだ?」
「……いえ。そろそろ、私は仕事に就きますので」
純一の問いかけを麻子はさらりと交わして、雪乃に今一度挨拶をする。
「城崎様。お慕い頂けるのは光栄ですが……私は、ここにいるときは職務中でもありますので、あまりお時間は……」