好きになっても、いいですか?

「……取り込み中、悪いな」


機嫌悪そうに純一がそういうと、敦志と麻子は目を合わせてから純一を見た。


「報告だ」
「報告?まだ何か?」
「……少し、本来の予定より早まったが、10月に異動して貰おう」
「異動?私ですか?芹沢さんですか」


このゴタゴタが落ち着くかどうかもわからないままの異動宣告に、さすがの敦志も驚き、目を大きくしている。


「あ、私ですよね。こうなったら即戦力が必要ですし」
「いや、敦志。お前に」


麻子が予想して言った言葉を短く否定して、純一は敦志に向かってさらりと言った。


「え……?」


さすがの麻子も、純一が何を言っているのか理解出来ずに呆然としてしまう。

しかし、それを宣告された当の本人、敦志は、既に冷静さを取り戻していた。
純一の命令に動揺することなく、黙って純一と向き合っていた。



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