好きになっても、いいですか?


「どうぞ」


元来た廊下を戻り、次に案内されたのは社長室に隣接された部屋だった。
中に入ると、右隣に向かってまたドアがあった。恐らく社長室に通ずる扉だと、麻子にでも容易に想像はできた。


「今日から芹沢さんは、このデスクを使用して下さい。それと」
「秘書課はふたつあるということですか?」
「いえ、そうではありません。ただ、社長のご意向で、社長秘書である私個人の部屋を割り当てられたのです」
「……余程早乙女さんを信頼されているんですね。それとも、早乙女さん以外を信用されてないのか――」
「うちは基本、完全マンツーマンの秘書体制ですから。この方が都合も良く、特に問題もないからでしょう」


要は複数の秘書が複数の重役に付くわけではなく、担当者がそれぞれにいるということだろうか。

それは理解できたが、じゃあなぜ自分が社長側近の補佐になるのか。

社長と言うからには、多忙を極めるであろうし、それに伴うスケジュール管理も大変そうだ。
だから人手を増やす、という意図であるならやはり即戦力が必要なはず。
先程の宇野のような――。


「どうかされました?」



< 44 / 445 >

この作品をシェア

pagetop