好きになっても、いいですか?

(ぬ、脱ぐって、なんで……)


「ああ、大丈夫です。そこにレストルームがありますから」


そうじゃなくて……と喉元まで言葉が出掛けた時だった。


「普段はそのスーツでも特に問題はないとは思いますが……今日はちょっと不都合でして。既に代わりは用意してありますから」
「えっ……」

(……今日、何かあるのかな)


敦志に言われるがまま、麻子はスーツを渡され、レストルームに入った。

カバーを外してスーツを見てみると、ベージュの色あいが上品なスカートのスーツ。シャツも、今着ている白とは全く違って見える柔らかい白。
勿論素材も、少し撫でただけで滑らかな感触が手から伝わり、自分の安物との違いがすぐにわかる。

いかにも値段が張りそうな代物に、麻子は溜め息が出た。


コンコンコンッ。


「はっはい!すみません、まだ」
「あぁ。申し訳ありません。芹沢さん、髪をアップにすることは出来ますか?」
「え?あ、はい……出来ますけど……」



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