好きになっても、いいですか?

02



「――社長、失礼します」


隣接した部屋から、社長室に足を踏み入れたのは敦志。


「お待たせ致しました」
「ああ――……」


目の前の書類から、視線を上げるのが惜しそうにして純一は顔をあげる。
しかし、不覚にも書類内容を忘れてしまう程に、一瞬で目を奪われた。

元より秀でた顔立ちとその長身。昨日までは制服で、先程までは黒のリクルートスーツと、パッとしない身なりであったが今は違う。
身体のラインがわかる、女性らしいデザインのスーツ。その色が明るくなっただけで、こんなにも印象が違うものか。

一番は恐らく髪型。
かっちりとひとつに束ねられていたストレートの黒髪は、ふわりと後頭部にアップにされていて、より一層麻子の容姿を引き立てていた。

ただ美人でスタイルがいい女性であれば、純一の周りにはごまんと居て、飽きる程見てきた。

けれど、彼女がそれらと違うと感じる理由は、恐らくその強い内面から滲み出ている瞳――。

凛として真っ直ぐ前を見つめるその綺麗な黒い瞳。

そこには、“女”を武器にしているような女性達にはない力強さが感じられる。



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