好きになっても、いいですか?
「大丈夫ですよ。私が一緒ですから」
純一とは違って、優しくフォローをしてくれる敦志には、麻子も少しずつ気を許していた。
敦志を見つめると、ほんの少し口を弓なりに上げてほっとしたように微笑んだ。
敦志もその笑顔を受けて、メガネの奥の目を細くして返した。
「では、時間まで簡単に説明しましょうか。宜しいですか?社長」
「ああ、頼む」
「はい。芹沢さんならすぐに覚えてくれるでしょう」
そして、一歩前にいる敦志が軽く一礼すると、麻子の方を振り向いて、隣の秘書室へと戻るよう促された。
麻子も慌てて一礼し、敦志の後ろをついて退室した。
純一は二人が去った扉を見つめて、麻子の印象がガラリと変わった姿を思い返していた。