好きになっても、いいですか?
脚立に足を掛け、1メートルほどの蛍光灯を外して付け変える。
作業を終えて、降りるのがあと一段という時だった。
「!!?」
「きゃっ……!!」
ちょうど曲がり角ではあった。
だけど、足音も聞こえないカーペットはお互いに誤算だった。
まさか人がいるとも思わずに手元の封書を見ながら歩いていた男は、見事脚立に激突し、歩くスピードの反動が自らに返ってきて尻もちをつく。
そして麻子もまた、手にしていた蛍光管を離してしまって床に手をつく。
ぐらりと倒れ掛かってきた脚立を視界に捕えると、麻子は反射的に腕で顔を守るようにして目を瞑った。
「大丈夫ですかお二人とも」
しかし、想像していた衝撃はいくら待ってもなく――そっと目を開けるとメガネを掛けた男が脚立を支え、麻子ともう一人の男を交互に見やっていた。