好きになっても、いいですか?

「おや?藤堂さん!とうとう女性をつけたんですか?」


急に視線を自分に向けられて、戸惑う麻子はただ笑顔で会釈をした。
その麻子の姿を純一も振り向き見ると、また佐伯と対峙し笑顔で答えた。


「ええ。彼女はまだ見習いですが」
「とても綺麗な方じゃないですか。もしかして……」
「残念ながら、そういった関係ではないですよ」
「言わなくともばれたか!でも、藤堂純一は女性を秘書(パートナー)として選ばない、という噂で有名でしたけど、でっちあげでしたか」


ははは、と終始大きな口で笑いながら言う佐伯は、視線を再び麻子に向けた。


「もしかして、そのスーツはわが社の?」
「……はい。アヴェク・トワを」


純一の無言の視線が、“返事を”、と訴えられていると気付いた麻子は、控えめに一言そう答えた。

< 54 / 445 >

この作品をシェア

pagetop