好きになっても、いいですか?


「失礼致します。急なお約束になりましたことを御詫び致します、濱名社長」
「ああ!藤堂くん!いやいや、待ってたよ」
「嬉しい御言葉、ありがとうございます」
「ははは!藤堂くんのとこで丁度メンテナンスして貰いたくてね!後で部下に詳しい書類を送付させるよ」


恰幅のいい50代位と思われる男性は社長の濱名だ。見た目同様人柄も温厚そうな雰囲気に父を感じ、麻子も少しだけ肩の力が抜ける。


「ああ、そうだ。芹沢」
「はい。こちらをどうぞ」


談笑がちょうど区切りよくなった時に、純一が麻子に指示をした。
麻子の手には、大きすぎない程度の鮮やかな花束。
それをにこりと微笑んで濱名に渡した。

一見、この色とりどりの可愛らしい花束と、この50代の男と。

そんなミスマッチな姿に、純一も敦志も少し不安を覚えていた。
しかし麻子は依然として笑顔のまま、濱名に花の話をしようとする。


「御存知かもしれませんが、そちらの中の――」



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