好きになっても、いいですか?
「藤堂くん」
「はい」
花束を手にした濱名が、麻子の話を遮り純一の名を口にする。
そして、変わらぬ表情で、受け取ったばかりの花へと視線を落としていた。
(賭けに出過ぎたか――)
純一も、勿論純一と同じように感じた敦志も、ゴクリと唾を飲み、ただ濱名の言葉の続きを待った。
濱名商事は昔からの得意先で今関係にヒビが入ると痛い。
売上高が物凄いある客ではないが、信頼関係から他にも会社を紹介してもらったりもしていた。
そんな濱名商事とはなおのこと、関係を拗らせたくはなかった。
珍しい手土産にはなるが、そこまで立腹させることもないだろう。
そう考えていたのが甘かったか――と、純一が次に言う言葉を選びはじめた。
その時間がとても長く感じて、冷や汗も出始めた時だった。