好きになっても、いいですか?

「いや、お恥ずかしい!御存知でしたか!」
「は……」
「この歳、この風貌で花や植物が好きでね。休日に、自宅で家内とガーデニングをやったりして……」


明るい笑い声が室内に響くと、純一も敦志も目が点になる。


「奥様もお気に召されるといいのですけど」
「そりゃあもう、目を輝かせて喜ぶさ!私も久しく花なんて贈っていないからなぁ。この、ガーベラという花が家内は好きなんだ」
「左様で御座いましたか。先程の続きなのですが。
ガーベラなどの切り花は、茎の表面からも水を吸収して、吸水が良すぎて早く咲ききってしまうそうです。お水は底から2~3cmくらいの量で。これは花器に生けるときも同様だと、花屋の方から教えて頂きましたよ」
「ほぉ。それは知らなんだ。覚えておこう」


麻子が花のような笑顔で濱名に花のマメ知識を伝えると、濱名も機嫌良くそれを聞き入れる。

そんな自分たちに向けられた、純一の視線に気が付いた麻子は、一礼してすっと身を引き後ろへ戻った。



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