好きになっても、いいですか?
「ちっ」
「お怪我は?」


ぶつかってきたであろう男は舌打ちをし、その場に立つとスーツを軽くほろい始める。
対照的に、メガネの男は麻子を気遣う言葉を掛けてきた。


「あ……はい。すみません……」


突然の事故と、感じの悪い男と、気遣いの出来る男。

色々な思考が駆け巡り、一瞬ボーっとしてしまったが、麻子はすぐに我に返り床に広がっている書類を拾い上げる。


(セナフーズ株式会社、記念イベント……)


「社長、大丈夫ですか」


拾い上げた紙を無意識に読み取っていると、脚立を立て直した男が信じられない言葉を口にする。その言葉で、麻子は視線を“感じの悪い男”に向けた。


「ったく。仕事をしても邪魔だけはしないでほしいものだな。これだから女は」


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