好きになっても、いいですか?

「やり方は君に任せる」
「……中身を確認しながら作業しても……?」
「勿論構わない。但し、守秘義務は守ってもらう」
「……承知致しました」


麻子は、表情ひとつ変えずに指示に従い作業を始める。


「敦志は自分の仕事が終わり次第、今日は帰宅しても大丈夫だ」
「でも」
「たまにはゆっくりしたらいい」
「……わかりました」


純一と敦志の会話は、勿論麻子の耳にも入ってはいるが、二人に目もくれずに黙々と資料とにらめっこを始めていた。

横目でチラリとそんな麻子を見た純一は思う。


(多分、コイツならこの作業だけでも、多少知識として頭に残るだろう)


純一はそんな考えから、素早く整頓出来る敦志ではなく、敢えて何も知らない麻子に仕事を任せたのだ。

そして、敦志は隣接された部屋で残件処理をし帰宅した。

外が茜色から群青色の空へと変わっても、純一はパソコンを睨んだまま。
麻子も声ひとつ漏らさずに純一のすぐ近くで作業を続けていた。


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