好きになっても、いいですか?
麻子と敦志が隣室に戻り、2人きりになった途端だった。
「芹沢さんはやはり、普通じゃないですね」
「……申し訳ありません」
「いや、そうじゃなくて。社長に本当に必要なのは、あなたのような人かもしれない」
「必要だなんて。私は嫌われてますから」
麻子の自信を持って言い切った一言に、敦志は目を丸くした後に笑ってしまう。
「いえ……恐らく、その逆ですよ」
「そんな風にはまったく見えません」
「お世辞じゃないですよ?あの純一くんに指図をして、食事を採らせるんだから」
(“純一くん”?)
今まで麻子は不思議に思っていた。
純一が“敦志”と呼び捨てにしていることを。
それは当然二人きり、もしくは麻子のみいる時にしか該当せず、社内外問わず、第三者がいれば“早乙女”と呼び方を変える。
何か特別な、親密な関係なのだろうか。
そう思うには充分な理由だったが、今の敦志の発言で確信に変わった。